フェアトレードタウン: “誰も置き去りにしない”公正と共生のまちづくり - 渡辺 龍也 (わたなべたつや)

フェアトレードタウン: “誰も置き去りにしない”公正と共生のまちづくり

フェア(公正)な取引や買い物をすることで、消費者が自身の生活や意識を変革するとともに、弱い立場におかれた生産者や労働者の人たちが人間らしい生活を送れるよう支援するフェアトレード。そのフェアトレードを、地域(市区町村)の市民、商店・企業、行政・議会がこぞって推進する「フェアトレードタウン運動」が、各地で静かな広がりを見せています。
2000年にイギリスの小さな町で産声を上げたこの運動は、世界各地へその輪を広げ、五大陸31カ国に2000を超えるフェアトレードタウンを誕生させるまでになりました。日本でも、熊本市が2011年に初のフェアトレードタウンとなったのに続いて、名古屋市、逗子市、浜松市が仲間入りを果たしています。
運動は当初、発展途上国の零細な生産者や労働者の人たちが一日も早く自立できるよう、「まちぐるみ」でフェアトレード製品を積極的に購入することに焦点を絞っていました。ですが近年は、フェアトレード以外の「倫理的消費」も推奨したり、地産地消を推進したりと、その幅を広げています。
日本の運動はさらに、足元の社会にも目を向けて、誰もが居場所を持ち、生き生きと暮らすことのできる「公正と共生のまち」にしていこうと、環境、福祉、人権など、さまざまな分野の市民活動・運動との連携を推し進めています。
自由競争を至上の価値とする「グローバリゼーション」が世界を覆いはじめて30年余。この間、経済格差もグローバルに広がり、不安に満ちた生活を強いられる人々が増えていて、それが「自国第一主義」や、他者に対する不寛容な差別的言動を蔓延させていると言われます。
先進国、途上国を問わず、グローバリゼーションによって社会の片隅に追いやられた人々が、排他的なリーダー達の企図に翻弄され、互いに競争し対立するのではなく、互いに認め合い共生していく―そうした「誰も置き去りにしない社会」を築き上げていく運動が、今ほど必要とされている時代はありません。フェアトレード運動は、その力強い一翼となるはずです。
さあ、あなたのまちもフェアトレードタウンをめざしませんか?

2018/3/6発売


渡辺 龍也 (わたなべ・たつや)
NHK記者、米大学院、国際機関職員、NGOスタッフ(ラオス駐在)等を経て、2000年から東京経済大学教員(担当分野:国際開発協力、NPO論)。研究のかたわら、フェアトレードタウン・ジャパン(現日本フェアトレード・フォーラム)、日本エシカル推進協議会等の立ち上げに関わり、理事を務める。学生とともに「まちチョコ」活動も実施